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お知らせ

ケロイド・肥厚性瘢痕について

更新日:11月27日

皆さんこんにちは、形成外科医の長坂です。

今日はケロイド・肥厚性瘢痕といった異常瘢痕についてお話しします。


「手術後の傷跡が赤く硬いしこりができた」「耳に開けたピアスの穴が盛り上がってきた」「ふくれた傷跡が引きつれる」――こういったものは、異常瘢痕の可能性があります。


もとの傷の範囲を超えて拡大する異常瘢痕をケロイド、もとの傷に限局するものを肥厚性瘢痕と呼ぶのですが、基本的には両者を病理学的に区別することは難しいとされています。



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図1 典型的なケロイド



ケロイドの歴史は古く、紀元前1700年に書かれたエジプトのパピルス(エドウィン・スミス・パピルス)には「牡牛の皮のように盛り上がった瘢痕」との記載があり、これがケロイドを指すと解釈されています。「ケロイド(Keloid)」という名称は、フランスの皮膚科医Alibertがギリシャ語の“蟹の爪(chele)”に由来して命名したものです。その後、さまざまな研究が行われていますが、動物モデルの不足などによりケロイド形成の正確な病態生理はいまだに完全には解明されていません。


ケロイドが形成される原因は、創傷治癒過程でのコラーゲン産生や線維芽細胞の制御異常にあります。本来、創傷治癒の初期段階ではコラーゲンを含有する細胞外マトリックスを形成するのですが、その産生と分解のバランスが崩れたり、サイトカインが異常産生されたりすると異常瘢痕が形成されます。ケロイドと肥厚性瘢痕は細胞死(アポトーシス)などで違いがあるのですが、こういった基礎系の内容は少しマニアックなので、いずれリクエストがあれば詳しく書きます。

リスクファクターとしては、家族歴、若年者、有色人種、妊娠などがよく知られており、皮膚に張力がかかりやすい前胸部や肩周囲などが好発部位です。国内でも研究が盛んで、特に日本医科大学の研究チームは世界的にも高く評価されています。


ケロイドや肥厚性瘢痕は見た目の問題だけではなく、かゆみや痛みが続いたり、傷あとが引きつれて動かしにくくなったりする(=瘢痕拘縮)こともあり、日常生活に支障が出ることがあります。




さて、ケロイド・肥厚性瘢痕の治療ですが、基本的には保存的治療が選択されることが多いです。治療内容については、病変の部位や大きさ、性質によって治療方針は変わってきます。保存的治療とは具体的に、ステロイド剤の局所注射や外用、シリコンテープなどによる圧迫療法、トラニラスト内服などがあります。これらは患者さんの状態や希望に応じて組み合わせていきます。



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図2 ケロイドの治療方法



「ケロイドを切除してしまいたい」とおっしゃる患者さんも多いのですが、基本的には単に切除術を行うだけでは再発するとされています。ケロイドの切除術に、術後放射線療法(電子線照射)を併せて行われることがあり、これにより再発率が下がります。

ただし耳介ケロイドについては例外的で、症例によっては切除術のみでも良好な結果が得られることが多いと言われています。


私が形成外科を志した理由のひとつに「傷をきれいに治したい」「ケロイドや肥厚性瘢痕をなくしたい」という思いがあります。この思いは今も変わらず、日々の診療や自身の研究の根底に息づいています。ひとりでも多くの方が、傷跡を気にせず、自分らしく生活できるようお手伝いできればと思っています。


 ケロイドや目立つ傷跡、突っ張りや引きつれを感じる傷跡の治療は、形成外科が専門としています。気になる傷跡がある方は、ぜひ一度ご相談ください。



甲府昭和形成外科クリニック

担当 長坂優香

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