Osmidrosis・Hyperhidrosis
腋臭症・多汗症
腋臭症(わきが)
「わきが」でお悩みの方にとって、汗をかきはじめる春先から夏にかけては非常につらい時期です。また、秋や冬でも汗ばむとつらいものです。「体臭が強い」ことから、外出が とても緊張したものとなります。また、ニオイが気になって仕事や勉強に集中できないと訴える方、ニオイに気付かれるのがこわくて人と交流できないなどの悩みを持つ方が多くいらっしゃいます。
ワキの下には「アポクリン汗腺」と「エクリン汗腺」という2種類の汗を出す分泌腺があります。
「エクリン汗腺」はほぼ全身に存在しており、私たちが一般に「汗」と呼んでいるものを分泌します。この汗は主に体温を調整するために分泌されます。エクリン汗腺から分泌される汗そのものは無臭で皮膚の常在細菌の活動を抑える働きがありますが、衣服や皮膚に付いた雑菌に「湿気」を与えて活性化させる原因となります。汗に濡れたものをそのままにしておくとだんだんニオイが生じてくるのはこのためです。
一方、「アポクリン汗腺」は、耳の穴、わきの下、乳輪、おヘソ、性器、肛門周囲などの限られたところにのみ存在する汗腺です。成長とともに肥大し、思春期の頃から遺伝や性ホルモンなどの影響を受け発達し始めます。アポクリン汗腺からはタンパク質、脂質、糖質、アンモニア、鉄分などを含み、粘り気のある白っぽい汗を出します。これらの汗に含まれる成分が雑菌によって分解されて独特のニオイが発生するわけです。汗をふき取ったり、清潔に保つだけではニオイを抑えることはできません。
また、ワキガの人のうち半数以上は汗の多い多汗症(わき汗)をともなうといわれています。日本人のワキガの人の割合は約10%と非常に少ないといわれていますが、逆に少ないためにワキガの方が目立ってしまい、悩みの種になっているケースが多いようです。遺伝による要因が大きく、両親のどちらか片方がワキガである場合、50%の割合で遺伝するといわれています。
多汗症
多汗症には様々ありますが、腋窩多汗症がもっとも頻度の高い多汗症です。そのほか、手掌、足底、額、外陰部などが代表的です。
多汗症と腋臭症の治療法
非手術療法
制汗剤
腋臭症で悩む方の多くが市販の制汗デオドラントを使用していると思います。しかし、本当にわきのニオイに悩んでいる方には、満足のいく効果が得られていないことが多いのかも知れません。
レーザー脱毛治療(自費診療)
毛包の周囲には、汗腺、皮脂腺などの毛嚢付属器と呼ばれる組織があります。針脱毛やレーザー脱毛によって、この付属器に障害を与えることで、わきのニオイが軽減することがあります。
※ただし、レーザー脱毛治療は健康保険は適用されません。
ボトックス注入療法(自費診療)
傷が残ることに抵抗がある方へは、ここ数年の新しい治療法としてボトックス注射療法があります。ボトックスはもともとは痙性斜頸や眼瞼けいれん、表情じわの治療に対して用いられていましたが、わきの皮膚に注射すると、汗を分泌させるポンプの作用を持つ筋上皮細胞を弛緩させることで汗をかく量を減らす効果があります。汗を異常にかく多汗症には特に効果的です。腋臭症に対しても汗をかかなくすることで、ニオイが緩和されることがあります。
ミラドライ治療
未婚の若い女性に対しては、キズの残る手術療法を行う前に、レーザー脱毛とボトックス注入療法を併用した治療や下記のミラドライをお勧めしています。
手術療法
基本的には切らない腋臭症手術で効果絶大なミラドライ治療を第一選択としてお勧めしますが、経済的な理由などで保険適用の術式を希望される場合は、皮弁法(皮膚反転剪除法)による手術を行ています。
ミラドライ治療(miraDRY)
マイクロ波を用いた切らない腋臭症手術といわれています。
皮弁法・反転剪除法(健康保険適用)
腋臭症の手術方法はたくさんの種類があります。アポクリン汗腺を取り除くという点ではどれも同じですが、はさみで取り除く方法、刃のついた特殊な道具を用いる方法、超音波脂肪吸引器を用いる方法、などなど多数あります。当院では、オーソドックスなはさみで取り除く方法を選択しています。
治療費
健康保険適用で3割負担の場合には、自己負担額は約4万円ほどです。
印象としては、患者様の満足度は概ね良好な術式です。
しかし、もっとも大きな問題点は切開した傷が残ったり、瘢痕拘縮(引きつれ)が生じやすいことです。
手術方法
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ワキの皮膚のしわに沿って、通常女性では1ヵ所、男性の場合には2ヵ所3㎝程度の切開をおきます。
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腋毛部の範囲で浅筋膜上を剪刀(はさみ)で剥離します。
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剥離した皮膚を指で裏返しながら、形成剪刀などを用いて、アポクリン汗腺を含む真皮深部と皮下組織を切除します。
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あまり攻めすぎて皮膚を薄くすると、皮弁壊死の危険が大きくなりますので、注意が必要です。
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十分な止血を行い、ペンローズなどのドレーンを留置し、皮膚を縫合します。
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内出血を防ぐための圧迫処置として、タイオーバー法での圧迫固定を行うことがあります。
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術後は、2-3日目にドレーン抜去を行い、7-10日後に抜糸を行います。
※補足と注意点
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術後の安静
わきは肩関節にあります。日常生活をしているとなかなか肩関節の安静を保つことは容易ではありません。しかし、術後の安静が合併症を避けるために重要なポイントとなります。患部の圧迫固定が重要です。テープを使用しないで患部を圧迫固定するための器具として、圧迫用ボレロを用意しています。圧迫用ボレロは、約8,000円かかり悩ましいのですが、テープ固定によるびらんや色素沈着を予防しながら良好な圧迫状態を保つことができ、大変有用ですので使用を基本としています。
圧迫用ボレロです。
これを使用するようになってからテープかぶれが大幅に減りました。
・治療効果
皮膚が薄くなるほどしっかり汗腺切除を行うと、除臭効果は大きくなりますが、目立つ傷跡が生じやすくなります。一方、手加減しすぎると、傷跡はきれいですが治療効果がさっぱりということにもなりかねません。また、実感できる効果については、個人差があります。
形成外科医が丁寧に手術を行っています。