二重全切開術後に目が開きにくくなった?―医原性眼瞼下垂について

「二重の全切開を受けてから、以前より目が開きにくくなった」
「二重にはなったけれど、眠そうな目になった」
「左右で黒目の見え方が違う」
「二重の食い込みが強く、目を開けるとつっぱる」
最近、このような主訴で私の外来を受診される患者さんが増えています。
全切開法重瞼術(二重全切開法)の術後に、以前より上まぶたが下がってしまうことがあります。このような医療行為が原因となって生じた眼瞼下垂を、医学的には「医原性眼瞼下垂」といいます。
なぜ全切開重瞼術で眼瞼下垂が生じるのか?
開瞼(まぶたを上げる)する際には、「眼瞼挙筋」という筋が収縮し、その力は先端にある薄い膜状の組織「挙筋腱膜」を介してまぶたの瞼板に伝わります。
全切開法重瞼術の場合、重瞼線を作成する際に瞼板付近でこの挙筋腱膜のすぐ近くを手術操作します。そのため、この挙筋腱膜を損傷してしまうことがあります。眼瞼手術の成書にも、手術中に挙筋腱膜を損傷しないよう注意することが重要と記されています。
挙筋腱膜が傷ついたり、本来の位置から外れたりすると、眼瞼挙筋の力がまぶたに十分伝わらなくなり、上まぶたが十分に挙上できなくなります。つまり眼瞼下垂になります。
これは、意外としばしば見られます。
しかし、実際に全切開後の修正手術を行っていると、原因はそれだけではなく他にもあります。
「切れている」のではなく「動けなくなっている」
重瞼ラインの固定位置が高すぎたり、固定が強すぎたりすることによって、まぶたの動きが制限されているパターンです。
全切開法重瞼術は、皮膚と深部組織との間に適度な癒着を作ることで、二重を形成する術式です。ところが、意図しない場所に強い瘢痕や癒着が生じることで、まぶたを開ける組織の動きが妨げられて開瞼が悪くなる。このパターンも少なくありません。
つまり、挙筋腱膜そのものが完全に切れたり外れたりしていなくても、周囲の組織に癒着して自由に動けなくなることで、眼瞼下垂が生じることがあるのです。
このような患者さんでは、
二重幅が不自然に広い(過大重瞼といいます)
二重の食い込みが強い(これは“ハム目”と呼ばれています)
目を開けるとつっぱる
以前より眠そうな目になった
左右の目の開きが違う
といった症状を伴うことが多くあります。
この様な症状がメインのケースは、重瞼ラインの固定位置が高すぎたり、固定が強すぎたりすることによって、まぶたの動きが制限されて、眼瞼下垂になっている可能性があります。
では、どうやって修正するか?
眼瞼挙筋腱膜が外れてしまっているのであれば、眼瞼挙筋腱膜を適度に前転して修復します。
一方、強い瘢痕や癒着によって動きが妨げられているのであれば、癒着を解除します。
さらに、不自然な二重の固定が原因となっている場合には、一旦癒着を解除してから、重瞼ラインそのものを再構築します。
つまり、同じ「全切開後の医原性眼瞼下垂」でも、原因により修正手術の考え方は変わってきます。
挙筋腱膜が損傷しているのか。
瘢痕や癒着によって動きが制限されているのか。
重瞼の固定に問題があるのか。
もともとの眼瞼下垂が顕在化したのか。
それらの原因を見極めたうえで、「自然な重瞼ライン」と「開瞼(まぶたを開ける)機能」の両方を修復することが、全切開後の医原性眼瞼下垂を治療する上で重要です。
お困りの方は、是非ご相談ください。

甲府昭和形成外科クリニック
百澤 明



